こんにちは。
大阪府吹田市江坂の「はやし歯科クリニック」です。
朝起きた時から顎がだるい、痛い、肩こりや頭痛が続いている・・・。
もしかしたらそれは、寝ている間の歯ぎしりや食いしばりが原因かもしれません。
今回は『歯ぎしり』『食いしばり』をテーマに歯医者が解説していきます。
その歯ぎしり、自身で気付いていますか?
歯ぎしりや食いしばりに関して、あまりピンと来ない、自分には関係ないと思っている方も多いかと思います。
ですが、何かに集中している時、ストレスを感じている時、睡眠時など、歯ぎしりや食いしばりの経験がある日本人は実に70%に上ると言われています。
検査をしても異常がないのに、慢性的な疲労感や肩こり、頭痛などの症状が続くという方は、もしかしたらこの歯ぎしりや食いしばりが原因かもしれません。
ぜひ、本記事を参考にしていただき、思い当たるところや気になる事がありましたら当院までお気軽にご相談ください。
『ブラキシズム』とは?
歯ぎしりや食いしばりなどの癖のことを、専門用語で『ブラキシズム』と言います。
ブラキシズムとは、歯をこすり合わせる、いわゆる歯ぎしりを指すグラインディング、食いしばりの状態を指すクレンチング、上下の歯をカチカチと小刻みに音を立てるタッピングといった行為の総称です。
その発現のタイミングにより、覚醒時ブラキシズムと睡眠時ブラキシズムに区分されます。
覚醒時ブラキシズムは、日中に起きている時に無意識、または意識的に行われる歯ぎしりや食いしばり、噛み締めのことです。
また、これとは別に、長時間上下の歯が接触し続けるTCH(歯列接触癖:Tooth Contacting Habit)という状態も含めて広義の覚醒時ブラキシズムとされます。
今この記事を読んで下さっているあなたにお尋ねしますが、何もしておらず、力が入っていない時は上下の歯は接触していませんよね?
通常、安静時に上下の歯が接触している時間は1日の平均で17.5分と言われており、それ以外の時間は安静空隙と呼ばれる隙間が上下の歯の間にあるのが普通です。
隙間があるのが通常のところ、長時間にわたり歯の接触が続くと、強い力での食いしばりのみならず、弱い力の噛み締めでも顎の筋肉や関節に負担がかかります。
結果として肩こりや顎の痛みといった全身症状のほか、歯が摩耗したり割れたり、歯周病を招いたりと口腔内の不調へとつながります。
次に睡眠時ブラキシズムですが、こちらは就寝時に発生する歯ぎしり、食いしばりのことです。
睡眠時ブラキシズムの一番の特徴が、その『噛む力』にあります。
意識のある時、人間の噛む力は最大でも自分の体重くらいの圧力と言われています。
例えば体重が50kgの方の場合ですと、一番力のかかる奥歯での噛む力がだいたい50kgくらい、ということになります。
ところが寝ている時などの無意識下になると、脳のリミッターが外れ、意識のある時と比べて5〜10倍、部分的には最大30倍の力で噛み締めていると言われています。
当院にも歯ぎしり、食いしばりで奥歯が縦に割れた患者さんがいらしたことがありますが、局所的に1トンを超える圧が繰り返しかかっていると考えると無理もありません。
覚醒時と同様にブラキシズムによる弊害として、歯の摩耗や破損が起こることで抜歯せざるを得なくなったり、ヒビや傷による知覚過敏のほか、歯肉や組織に力がかかってダメージが蓄積し、歯周病へとつながる恐れなどが懸念されます。
歯ぎしりや食いしばりで起こる不具合
ここで一度、歯ぎしりや食いしばりで起こる不具合をまとめてみましょう。
・知覚過敏や歯の痛み
・歯が割れる、折れる、削れている
・詰め物や被せ物の劣化が早い
・顎関節症
・歯茎や歯根に強い力がかかることによる歯肉炎や歯周病
・口腔内の刺激による口内炎
・咬筋の発達によりエラが張ったようになる
・肩こりや頭痛、ほか全身への影響
ブラキシズムの原因
では、そのブラキシズムを招く原因は何が考えられるのでしょうか?
以前は歯並びや噛み合わせに原因があるとされていましたが、現在ではその科学的な根拠は実証されていません。
精神的ストレスや遺伝、飲酒や喫煙の習慣、あるいは中枢神経系の疾患など、様々な因子が関係しているとされ、どのようなメカニズムで発生するかは明確にわかっていないのが現状です。
とは言え、ストレスの解消や癖を改めるといった対策で改善につながることも多く、自律神経の乱れや精神的ストレスが主な原因と考えられます。
食いしばりによる不調で悩んでいたり、家族に寝ている時の歯ぎしりを指摘された場合は歯科医院へご相談ください。
歯医者で行う対策としては、主にマウスピースが挙げられます。
一般的には上顎のみの型を取り、就寝時に着用するマウスピースを作成します。
マウスピースをはめることで、睡眠時の歯ぎしりや食いしばりの際の衝撃を分散させ、歯や顎に加わる力を軽減させる効果が期待できます。
よくネットなどで自分で型を取るマウスピースが売られていますが、型取りがやや難しいのと、フィット感で違和感を覚えるとの声を多く聞きますので、マウスピースを使われる際はご自身の歯型に合ったものを歯科医院で作られることをおすすめします。
また、覚醒時のブラキシズムにおいては外部環境や生活習慣に由来する癖といった側面が強いため、自分自身でどんな時に歯を食いしばったり、歯ぎしりをしているかを一度確認してみてください。
歯ぎしり、食いしばりのタイミングが自覚できれば、意識して行わないように習慣付けることで、徐々に回数を減らして習慣を変えていきましょう。
精神的なストレスも影響が大きいですので、ストレスを溜めない、また他のことで解消するよう、うまく気分転換してリラックスできるように工夫してみてください。
習慣的に歯ぎしり、食いしばりをしてしまっている方は顎や頭皮まわりの筋肉も常に力んでいる状態になりやすいです。
顎やこめかみのあたりを心地よい強さでマッサージするのも、筋肉の疲労軽減につながり、顎関節症や頭痛の予防効果が期待できます。
他の病気を伴う歯ぎしり、食いしばりについて
歯医者でのブラキシズムの対処についてはすでに述べましたが、以下に挙げる病気に由来する歯ぎしりに関しては、それぞれの症状に対応するクリニックの受診が必要となります。
近年、歯ぎしりとの関連が指摘されているのが逆流性食道炎です。
逆流性食道炎を簡単に説明すると、胃酸や胃の内容物が食道付近に逆流することで、その酸による刺激で食道に炎症が起きる病気です。
胃酸が口腔に近付き、口内が酸性に傾くと中和のために身体が唾液の分泌を促します。
唾液の分泌を促進する過程で歯ぎしりなどの口を動かす反応が生じるとされ、これが逆流性食道炎によって歯ぎしりが起こる仕組みです。
歯ぎしりを軽減させるマウスピースの作成は歯科医院で行えますが、逆流性食道炎の治療に関しては対応する診療科での治療が必要です。
もうひとつ、歯ぎしり、食いしばりと関連が深いのが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時の無呼吸で眠りが浅くなると、歯ぎしりや食いしばりも起こりやすいとされていますので、歯ぎしりに加えていびきなどが慢性的に続く場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることをおすすめします。
もしかして歯ぎしり、食いしばりをしてしまっているかも…と心配に思われた方は、以下のチェックポイントに当てはまっているかどうか確認してみてください。
・口を閉じた時に、上下の歯が接触している
・舌の外側に歯型のようなくぼみがある
・頬の内側に噛んだ後のような筋が見られる
・知覚過敏が気になる
・朝起きた時に顎が疲れている
・エラが張ってきた気がする
・歯の治療をした被せ物が外れやすい
・家族から歯ぎしりを指摘された
ひとつでも当てはまる方はブラキシズムの可能性がありますので、まずは相談からでも当院までお問い合わせください。
まとめ
ブラキシズムと呼ばれる歯ぎしりや食いしばりは、放っておくと口腔内のトラブルはもちろん、さまざまな全身の不調を招く恐れがあります。
その原因はひとつではないため、対処法もそれぞれ異なりますが、歯医者でマウスピースを作ることで軽減でき、また歯ぎしりや食いしばりで生じた歯の摩耗や噛み合わせの不具合の治療も併せて行うことができます。
思い当たる節がある方はお気軽に当院までご相談ください。